深夜から早朝にかけて『愛の涯 私は風になった』を観ていました。
2007年のドイツ映画。
主人公のウシ・オーバーマイヤーは、
60年代から70年代のロックンロールとフリーセックス
のシンボルとなったスーパーモデル。
その劇的な半生を描いた映画です。
ミュンヘン郊外の家で、堅物の両親のもとで育てられた少女ウシは、
ロックンロールに心酔し家を飛び出しました。
ヒッチハイクで乗っかった車が行きついた、
ベルリンの左翼コミューンで
非常に開放的なセックスが繰り広げられる共同生活に加わり、
ウシはそのコミューンのリーダーと恋に落ち
“セックス革命”のシンボルとなり世間でもてはやされ
有名雑誌の表紙をドイツ史上初、ヌードで飾るようになりました。
そんななか、ローリング・ストーンズのキースリチャーズと深い仲になり
ミック・ジャガーやジミ・ヘンドリクスとの恋も噂になり…
ウシは己の感性の赴くままに、様々なワイルドな男性のもとに
転がり込んでは刺激を求め続けます。
一所に定着し、身の安全や保障というものを全く求めない
ウシの奔放な生き方は、
ただひたすら世界中の面白いものを見続けたい、感じ取りたい
という好奇心と渇望によって動かされているようでした。
ウシは一見自由を求めすぎるあまり
ワガママで無責任で母性のかけらもない
悪女に見えるけど…
それなりに体を張って自らの信念に忠実に
身の回りの事物を取捨選択し
一分の隙も見せなかったシビアな女性だったといえるとも思う。
流産、大事な男の死。
それらの突然の災難によってウシは初めて
人生に対し恐怖を覚えるようになる。
そしてこれまで自分を愛してくれていた人の重さを自覚する。
キースと放蕩男の両方を失ってから
ウシはその後宝飾デザイナーの地位を築いて
どこかで生きているそうですね。
わたしはこの映画を見るまで彼女の存在を知りませんでした。
一昔前の保守的なドイツにあって、
こういう自由奔放な生き方をした
危険な魅力と美しさを湛えた女性がいたとは驚きました。
でもこういう人生、
やっぱ生まれ持った美貌と野性的な感性と妖しい魅力が
備わっていないと、なかなかしようと思ってもできるもんじゃないだろう。
それから、巡りあわせ、運も大事。
この映画で主人公ウシを務め、
ロックバンドHIMのヴォーカリスト、ヴィレ・ヴァロと一緒に
挿入歌「サマー・ワイン」を歌ったのは
ナタリア・アヴェロン。
実際にウシと容姿がそっくりな人で、めちゃ美人でカッコイイです。
キースやミックを演じた人も、本人にそっくりすぎて
よくできた映画ですわ~。
とにかくこの映画、観て良かった。
まだまだ世の中にはたくさん面白い人たちがいるんだな。